ビクトリア朝の子ども時代

ビアトリクス・ポター™は1866年7月28日、ロンドンのケンジントン、ボルトン・ガーデンズ2番で生まれました。ポター家は、召使いに囲まれて大邸宅に住む、典型的なビクトリア朝の家族でした。

ビアトリクスは乳母に育てられ、ほとんどの時間を家の最上階にある子ども部屋で過ごし、両親に会うのは、夜寝る時だけといったことも珍しくない生活でした。

教育を受ける年齢になると、子ども部屋は教室となり、ビアトリクスはひとりで家庭教師から授業を受けました。彼女のような上流階級の子女は学校には通わずに家庭教師につくことが多かったのです。

ビアトリクスが6歳の時、弟が誕生します。年の差がありましたが、二人はお絵描きを楽しみ、動物が大好きな仲の良いきょうだいでした。ポター家では常に犬を飼っており、子どもたちは、うさぎやねずみ、かえる、とかげ、へび、かたつむり、こうもりなどいろいろな生き物をペットとして飼育していました。

ビアトリクスの両親は、娘が他の子どもたちといっしょに遊ぶ機会をあまり与えませんでしたが、生き物を飼うことには寛容でした。また美術にも関心を持つようにと、特別な絵画の先生をつけたり、ギャラリーでの展覧会に連れていきました。

ビアトリクスと湖水地方との出会い

夏はビアトリクスが一年で一番楽しみにしていた季節です。毎年、父親が避暑のためスコットランドに3ヶ月間大きな家を借りていて、一家は電車で北部に旅をし、犬や召使い、馬車馬もいっしょに連れて行きました。うさぎやねずみなど、ビアトリクスの小さなペットたちも箱に入れられ、一緒に旅立ちました。

一家がよく訪れたのは、パースシャーのテイ川沿いにある「ダルギーズ」という家です。そこでは子ども達は自由に田舎を探検し、ビアトリクスは、細部を見つめる画家の目で、植物や昆虫を観察することを覚えました。

ビアトリクスが16歳の夏、「ダルギーズ」の家が空いていなかったため、一家はイングランドの湖水地方に家を借りました。これがビアトリクスにとっての初めての湖水地方訪問です。彼女はこの土地の美しさに一瞬にして魅せられ、その後生涯を通じて魅了され続けることになります。